会社設立ー自分に給料を支払うと税金がやすくなるー
「給与所得控除」の分、絶対に得
「会社から給料をもらうサラリーマンにも、収入によって、一定の額を必要経費といて認めてあげましょう」というのが、「給与所得控除」です。この給与所得控除こそが、法人成りした場合に、もっとも効果的な節税の材料になります。
個人事業主時代の「収入」といえば、なんといっても「売上」です。でも、売上に直接、所得税が課税されるわけではありません。売上から、これにかかる「必要経費」を差し引いた残りが「所得」です。厳密には「事業所得」と呼ばれているものです。
一方会社を作ると、社長個人も会社から給料(サラリー)をもらうサラリーマンになります。
本来なら、サラリーマンも個人事業主と同様に、スーツやビジネスバッグ、ビジネス書籍、自宅で仕事に使っているパソコンやインターネットなど、さまざまな必要経費がかかっているのでその必要経費を差し引いてあげなければ不公平になってしまいます。
ところが、サラリーマンには事業主のように必要経費を集計して所得から差し引くという計算が原則認められていません。
これに代わるのが「給与所得控除」という制度です。
給与所得控除は、収入の一定の割合を必要経費として、無条件で所得から差し引くことができる制度になっています。
とすると、法人成りすれば、会社の社長は実際に支払った経費については会社の所得から差し引くことができ、しかも、実際に支払いがなくても、給料の一定割合を給与所得控除として個人の所得から追加的に差し引くことができるようになります。
法人成りはこの辺りがお得なんです。
個人と会社の税金の違い
個人事業主のときの税金と、会社にして同じ額を自分に給料として支払った場合の税金を比べてみましょう。売上1000万円を上げた事業で、経費が400万円かかったケースを、個人事業主の場合と会社にした場合に分けて、以下に示しました。つまり、個人に入る年収が600万円となるケースです。
個人事業主 | 会社 | 会社の社長 | 差額 | |
売上 | 1000万円 | 1000万円 | ー | 0 |
自分に給料 | ー | 600万円 | 600万円 | 0 |
その他経費 | 400万円 | 400万円 | ー | 0 |
給与所得控除 | ー | ー | 164万円 | 164万円 |
所得金額合計 | 600万円 | 0 | 436万円 | -164万円 |
所得税 | 約69万円 | 0 | 約35万円 | 約-34万円 |
住民税 | 約56万円 | 7万円 | 約40万円 | 約-9万円 |
(個人)事業税 | 約15万円 | 0 | ー | 約-15万円 |
法人成りした場合の所得税などのメリット金額
約-58万円 |
また、以下に年収400万円~1500万円までで、個人事業主の場合と会社にした場合の、税額の差の例を示しましたので参考にしてください。
年収 | 個人事業主 | 会社+会社の社長 | 差額 |
400万円 | 約71万円 | 約44万円 | 約27万円お得 |
600万円 | 約141万円 | 約82万円 | 約59万円お得 |
800万円 | 約212万円 | 約134万円 | 約78万円お得 |
1000万円 | 約295万円 | 約199万円 | 約96万円お得 |
1200万円 | 約392万円 | 約273万円 | 約119万円お得 |
1500万円 | 約538万円 | 約404万円 | 約134万円お得 |
個人事業税の課税
ところで現在、個人事業主のみなさんは、「個人事業税」は課税されていますか。
確定申告では、国の税金である「所得税」と地方の税金である「住民税」が課税されることはご存じだと思いますが、実はこれ以外に、都道府県税事務所では、ほとんどの業種に対し、「個人事業税」として原則5%の割合で課税する場合があります。
この税金の納付時期が、毎年8月と11月。
3月に確定申告をすませて、まさに「忘れたころにやってくる税金」なのです。
ただし、売上から必要経費を差し引いて290万円以下の事業主には、この適用はありません。
一方、法人成りすると、会社の所得にたいして「法人事業税」や「地方法人特別税」が課税されます。しかし、自分の給料をとって、会社に所得が残らなければ、法人事業税や地方法人特別税は0円となります。ましてや、自分の給料に対して「個人事業税」が課税されることもありません。
つまり、法人成りすると、この原則5%分の個人事業税も節税されるケースがあるというわけです。
ただし、会社の場合、利益がゼロや赤字でも一定の金額を支払う必要がある「法人住民税の均等割」というものがあります。これは最低でも7万円を納めることが必要です。