建設業許可をしないリスク

許可がないことで取引先に迷惑をかけてしまう

建設業許可がないと「元請からの仕事が来なくなるかもしれない」、「資金調達が厳しくなる恐れがある」などリスクはあります。

確かにゼネコン各社が施工上のコンプライアンスを担保するために、軽微な工事のみを請け負う下請業者に対しても許可取得を求める傾向があるのは事実になります。

でも、本来建設業者にとって大切なのは「誠実な施工」「高い技術力」などであり、建設業というものはこれらをなくして「許可さえあれば仕事がとれる」という簡単なものではありません。

いつの時代も元請は、手際よく現場を納めてくれる下請に仕事を発注したいもので、それが一人親方の個人事業主であろうが、会社組織の法人であろうが、許可業者であろうが、無許可業者であろうが基本的には関係ないものです。

資金調達にしても、信用保証協会の「制度融資」(中小企業等の支援を目的とする制度に基づく融資)の基本条件が「建設業の場合は建設業許可を受けていること」とされているだけのことで、許可がなければ、ほかに融資を受けることができないわけではありません。

ですから、仕事が真面目で技術力もある建設業者の方であれば、資金調達の問題はともかく、許可がないことで元請から仕事が来なくなるというリスクはないというにせよ、本質的なリスクとは言えないのではないでしょうか。

それよりも建設業許可を取得しないリスクは、もっと別なところにあると考えるべきです。それは、いつまでも建設業許可をとらないことで「元請や発注者に迷惑がかかる恐れ」があり、これらの人々との「信頼関係を損なう」ことにもつながりかねないということです。

このブログをご覧のまだ許可を取っていない方にも、日ごろから優先的に仕事を回してくれるような親しい間柄の元請の現場所長などがいるかたも多いのではないかとおもいます。

元請の所長は、皆さんがいつもきちんと仕事をしてくれるので、皆様のことを大変重宝してる一方で皆様が許可を持っていいたら、「もっと仕事が出せるのに」「もっと金額の大きい仕事を回せるのに」といった不満にも似た気持ちもあるかもしれません。

また、その程度であればいいのですが「この仕事は何としてでも○○会社にやらせたい。でも500万円を超えるので発注できない。」などといいう問題が出てくると、事態は深刻になってきます。

元請の所長がどうしてもあなた方のところに発注したいのは、日頃から懇意にしているという理由だけではないと思います。

例えば、何らかの特殊事情があって、あなた方ではない許可を持っている他の業者が取って変わることができないような場合です。

建設工事というものは、請け負った予算や工期の中で図面どおりのものが完成されなければならず、完成する建設物には、求められるべき一定の品質や性能というものがあります。

このような場合、元請の所長は、あなた方でなければこれらの要求を満たすことができないことが分かっていながら、発注金額の上限の縛りを理由にほかの許可業者に発注するでしょうか?

元請も施主との契約を履行すべき責任上、私は、ほとんどの場合それは考えられないと思います。

そこで元請の所長は、あなた方のことを慮って、表に出ない形であなた方に工事をそのまま発注するか、あるいは2つ以上の契約に分割して発注するような苦肉の策を講じることでしょう。

大変ありがたいことですが、これがあだになることがあります。

それは、不幸にして違反が発覚したときのことで、このような場合、許可を受けずに工事を施工した業者は3年以下の懲役または300万円以下の罰金、発注者の元請業者も建設業法に基づく監督処分の対象となります。

ちなみに500万円を超える工事を2つ以上の契約に分割しても、請負代金の額は各契約の合計額とされているので、違反行為を免れることはできません。

許可なく発注した張本人が咎められるのは仕方ないとしても、せっかくの好意的に取り計らってくれた相手方にまで処分が及ぶというのはいかがなものでしょうか。

軽微な工事のみの請負であれば、確かに建設業許可は必要ありません。しかし、そのような考えは、時に自分勝手な都合であるということもあるのです。

元請の「早く許可を取れ」というのは、決して無理難題ばかりとは言えません。親心であることもぜひ皆さん知って頂きたいとおもいます。

元請、発注者等の取引先の期待と信頼に応え、良好な関係を築いていく上でも建設業許可の取得は前向きに考える必要があるといえるのではないでしょうか。

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