執行役員経験と補佐経験

この執行役員経験は、平成28年から認められたものでまだ、歴史が浅く、各地方公共団体の知事許可では、認められた例が非常に少ないかもしれない。申請する側としても、提出が求められている確認資料を5年以上前からきっちりと作成・保管してこなかった場合もあるし、仮に確認資料が揃っていたとしても、非常に難解な法解釈お要件審査をクリアしなければならない等、執行役員経験の認定のハードルは非常に高い印象が拭えない。

また、次に示すような社内事情により、執行役員経験を満たせず、経営業務の管理責任者になることができない場合があるのではないか。

まず、執行役員は「取締役」に「準ずる地位」であり、許可を受けようとするそれぞれの建設業の業種区分について、事業部門全般の業務執行に係る権限移譲を受けているものというのは、執行権限・責任の所在の明確化という観点から、社内において1人しか置くことができないであろう。部門「全般」の業務執行を権限移譲されるということは、複数人ではありえない。

その者が、仮に執行役員として経営業務の管理責任者になり、取締役等に出世することなく執行役員というポストに留まり続けてしまう場合、この執行役員というポストが空かず、「社内において後継者が育たない」ことになる。前述の通り、建設業法における執行役員制度は、具体的な権限移譲をうけていたとしても役員に準ずる地位であり、その経験は法7条1号イの要件とは一線を画し、「執行役員」という地位のまま経営業務の管理責任者になるしか道がない。つまり、経営管理経験の期間という要件を満たせず、次代の経営業務の管理責任者が育たないということになってしまうのだ。

建設産業は、他産業と同じく高齢化が進み「若者が入ってこない産業」といわれ、現在国は、建設産業政策会議にて策定された「建設産業政策2017+10~若い人たちに明日の建設産業を語ろう~」に基づき、各種施策の実現に向けて10年計画で進めている途中である。

建設業界に入った若者が仕事を覚え、経営業務に関わっていくようになったとき、上記のようにポストが空かない状態が続くと、いつまでも経営業務の管理責任者の要件を満たすことができず年齢だけ重ねて、そのうち退職せざるを得ない状況になってしまいかねない。このような状況だといつまでも若返りが業界全体で進まないのは目に見えている。

新設された制度をどのように適用していくかについては、審査行政庁等に更なる検討を期待したいが、申請する側としては、執行役員の経験のほか(経験を1年多く求められるというデメリットがあるものの)補佐経験の要件を満たしていく手法を活用することも視野に入れながら、経営業務の管理責任者になれる若手をどんどん育成していくことを本気で考えなければならない。

告示1号ロ「補佐した経験」

経営業務を総合的に管理した経験は有していなくとも、「経営業務を補佐した経験」があれば、経営業務の管理責任者として認められる場合がある。

経営業務を補佐した経験(補佐経験)とは、経営業務の管理責任者に準ずる地位(業務を執行する社員、取締役、執行役若しくは法人格のある各種の組合等の理事等、個人の事業主又は支配人その他支店長、営業所長等営業取引上対外的に責任を有する地位に次ぐ職制上のちいにある者)にあって、許可を受けようとする建設業に関する建設工事の施工に必要とされる資金の調達、技術者及び技能者の配置、下請業者との契約の締結等の経営業務全般について、従事した経験をいう。